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下原 理 騎手(兵庫)

2009年04月20日

 ここ数年、急ピッチに勝ち星を増やしている下原理騎手。
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各地への遠征も積極的にこなしており、最近ではチャンストウライで昨年の佐賀記念Jpn IIIを
制覇し、ベストタイザンで東海地区の重賞を3 勝と大活躍。激戦の兵庫地区で躍進を続けていく
下原騎手のこれまで、そしてこれからについてうかがった。

 下原騎手のこれまでの戦いは、ケガとの戦いでもあった。

■いちばんひどかったのが肝臓裂傷ですね。落馬したときに馬に踏まれたんですよ。即、救急車で
病院に運ばれて、開腹手術をして1 カ月半入院しました。手術はうまくいきましたが、入院の影響で
筋肉が落ちてしまって、体を戻すときにひどい筋肉痛になりました。厩舎に帰ってきて最初に馬に
乗ったときもすごい違和感で、落ちるかもと思ったくらいです。

もうひとつ、頚椎損傷もやっているんですよ。レース中に前の馬につまずいて、後ろの馬にも追突されて
落馬して、救急車で即入院。2 週間くらいでムリヤリ退院して馬に乗って、そのなかでケガを回復させて
いきました。

 死に直結してもおかしくない大事故。一歩でも間違っていれば、騎手・下原理はここにいなかっ
たかもしれない。

■生まれは広島県の福山の近くで、小学2年のときからずっと剣道をしていました。あちこちの道場に
行っていましたから、本当に剣道少年ですね。広島の県北大会で優勝したこともありますよ。
剣道のおかげで体が強くなりましたし、瞬間の判断力というのもついたと思います。剣道って知らない
人には単調に見えるでしょうが、やってみると相手との一瞬のかけひきが面白いんですよ。

 その修練の蓄積が、大事故のときに致命傷を負う危機から救ったのかもしれない。
そんな運動少年が、ふとしたきっかけで競馬の世界に進むことになる。

■知り合いが福山競馬の馬主さんで、ぼくをみて体も小さいしやってみないかと誘ってくださったんです。
それで中3 の夏休みに福山競馬場の厩舎に住み込んで修業しました。いやあ、体力的にも上下関係的
にも厳しかったですねえ。それでもイヤにならなかったのは、騎手の人たちの華やかさを感じていたから
だと思います。その知り合いは、騎手になるなら兵庫でとアドバイスしてくださって、それで園田競馬場に
も見学に来ました。そうそう、地方競馬教養センターの一次試験は、この部屋(検量室の上にある3 階の会
議室)で受けましたよ。

 そうして手に入れた騎手ライセンス。しかし当時の兵庫はベテランが上位を独占。
新人騎手には厳しい状況だった。

■何度もビデオを見て反省しましたよ。ちょっとでも人気があれば、勝ちを意識してしまって失敗とか......。
小牧太さんや岩田さんは人気馬で当たり前のように勝っていて、本当にすごいと思いましたね。
その2 人の動きはビデオでじっくり研究しました。ずっと見ていると、レース中でミスするところも
わかってくるんです。もちろんいい勝ち方をしたときのその理由も。とても勉強になりました。

 下原騎手の手本となっていた2 人は、JRA に移籍。自然と次代のトップを狙うチャンスがうまれ
てきた。

■そうですね。だんだんいい馬が回ってくるようになったと思います。と同時にプレッシャーも感じるように
なりましたね。最近はしっかり騎乗してダメならしょうがないと思えるようになりましたが。 レースでの
騎乗は、基本的にはゲートを出てからの流れにまかせます。行くと思っていた馬が出遅れたり、自分が
出遅れたり、思うような展開にはなりませんから、その瞬間でどう対処できるかが重要だと思うんです。
ある程度は相手関係を頭に入れますが、感性のほうを重視しています。

 05 年に64 勝だった勝ち鞍は06 年に119 勝に増加し、それ以後は年間3 桁をキープ。
好成績を続ける下原騎手には代表馬といえる存在が2 頭いる。

■チャンストウライのデビューのころは、ゲート試験でスタート直後に横に飛んでいくくらい、怖がり
だったんですよ。それが解消して、エンジンがかかると一気に加速するという感じになりました。
ダートグレードを勝たせなければいけない馬だと思っていましたが、早くに実現できてよかったです。
まあ、どちらかというと馬に勝たせてもらったという気持ちのほうが強いのですが(苦笑)。
一時は調子を落としましたが、ここ2 走は地方馬では最先着。なんとか復活してくれることを期待したい
ですね。 

ベストタイザンは昨年の夏休みのあと、走り方が悪かったんですよ。そのころはスタートもいまひとつで。
そういう状況でしたから、笠松グランプリで4 コーナーからスッと伸びてくれたときはうれしかったですね。
一時はもうダメかと心配しましたが、あの勝利で強さを再認識できました。 

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ベストタイザンも、昔は抑えがきかなくてしょうがなかったんです。2400 メートルで勝ったとき(園田金盃)
なんて、最初からずっと掛かっていたので腕が疲れてしまって、ゴール前では体をなでる感じでしかムチを
打てなかったくらいで(笑)。

 勝ち星を積み重ねる下原騎手は、今年中の通算1000 勝達成も不可能ではない。

■うーん、意識はありませんねえ。今、木村健騎手の勢いがすごいですが、人のことより自分。
どんなレースでも最善をつくすことだけを考えています。勝たないことには乗せてもらえないですし。
それでいい馬に巡りあって、そのチャンスを最大限にいかす。それが信用にもつながっていきますから。
本当にひとつひとつの積み重ねなんですよ。

 下原騎手はJRA への参戦も多い。 「この前、京都競馬場で3 着に入ったあとパドックで
『下原ありがとう!』という声が聞こえましたよ」と、うれしそうな表情。そんな下原騎手に、
これからの目標について聞くと、「前の年より常に多く勝ちたい」とのこと。その心は、
「自分も勝って喜びたいし、勝つことによってまわりの人たちが喜んでくれる姿をみるのが
うれしいから」 幸せの使者になるために自分の技術を磨く。その気持ちは確実に成功の
道へと向かっているようだ。

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下原 理 
しもはら おさむ

1977 年9 月3 日生 乙女座 B 型
広島県出身 寺嶋正勝厩舎
初騎乗/ 1995 年10 月10 日
地方通算成績/ 9,352 戦849 勝
重賞勝ち鞍/佐賀記念Jpn III、園田金盃2 回、
兵庫大賞典、菊水賞2 回、兵庫ダービー、東海
菊花賞、白鷺賞、播磨賞、笠松グランプリ、白銀
争覇、梅見月杯など18 勝
服色/紫、白ひし山形一文字
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※成績は2009 年2 月23 日現在

(オッズパーククラブ Vol.13(2009年4月〜6月)より転載)
 

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