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吉村 智洋 騎手(兵庫)

2011年12月12日

いまをときめく兵庫のスターホース、オオエライジンがいる橋本忠男厩舎に所属する吉村智洋騎手。

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同馬に騎乗した経験のある、数少ないジョッキーです。

吉村:最初はひ弱で頼りない感じのする馬だったんです。それがレース毎に成長していって、前走のレース前にも乗りましたけど、やっぱり凄いですよ!

竹之上:レースでも乗りたい?

吉:そら乗りたいですよ!でも、やっぱり木村さんしかないですわ(笑)。

そう先輩騎手を立てる吉村騎手も、気がつけば今年で10年目の(12月26日で)27歳。デビューしたころのあどけなさもすっかり抜けて、いまや兵庫を支える立派なジョッキーへと成長を遂げています。

通算495勝(12月8日現在)。500勝のメモリアルがもうすぐそこに迫っています。今年の勝ち鞍は61勝で、リーディング第9位。ここ5年は常に10位以内を確保しているように、安定した成績を残しています。

プライベートでは、ふたりの男の子の父親。その息子さんも、年が明ければ6歳と4歳になるんだそうです。

吉:ジョッキーの結婚は早いか遅いか極端ですよね。ぼくは20歳のときに、3つ上の嫁さんと結婚したんです。

竹:息子さんにはジョッキーになって欲しいと思う?

吉:家で仕事の話はほとんどしないんですけど、上の子は「なりたい」って言うことがありますね。でも「危ないから」ってちょっとビビってますけどね(笑)。

家族の話になると、少し照れながらもにこやかに話す吉村騎手。ところがレースに行けば、大胆な騎乗ぶりが持ち味。彼を良く知る園田ファンならお分かりでしょうが、一気に突き抜けるマクリが印象的なジョッキーです。

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竹:大胆なレースも魅力あるけど、最近はレースの流れもよく見えて良いレースができてるなぁと思ってんねん。

吉:そうですか、ありがとうございます。実は自分で変えていこうと思って、意識してるんです。ぼくはレースでいつも一気に行ってしまうんですけど、それを徐々にスピードアップできるようにと思ってるんです。

竹:じゃあ、大胆なマクリ戦法は封印するかも知れんってこと?

吉:マクリの合う馬もいるんですけど、あの戦法は馬の力があればこそですからね。それと、じっくり乗った方がいい場合もあるのに、どんな馬でも行ってしまってたところがあるので...。実は、ぼくこう見えて神経質なんですよ。じっくり乗った方がいいと分かっていても、つい不安がよぎって一気にマクってしまうんです。

分かるような気がする。自分の不安を悟られまいと、相手を威嚇するような態度を取ってしまうことって、誰しも経験のあることかも知れません。

竹:前から気になってたんやけど、レース中に後ろを何度も振り返るようにキョロキョロしてるときがあるよね。それもメンタルな部分の問題?

吉:そうなんです。自分が先頭に立って、もう大丈夫と分かってても、また不安がよぎるんです。うしろから誰かが来るんじゃないかって。

レースぶりや言動から受ける印象とは裏腹に、これほどまでにナーバスであったとは、人の本質は訊いてみないとわからないものです。だからこそ面白い♪

吉:周りの人からもよく、お前は力はあるんやから、もっと冷静になれって言われることがあるんです。よーいドンで追い出せば、誰にも負けないぐらい追えるのに、そこに至るまでに馬にムダ脚を使わせてるから負けてしまうんやと...。

竹:良いこと言ってくれる人がいるんやなぁ。他にも変えていこうと思ってるところはあるの?

吉:喋りすぎるところですかね(笑)。お前しゃべんな!とか、喋らんかったらもっと伸びるぞ!とか言われますもん(汗)。口は災いのもとって言うでしょ。アレですね(笑)。これからはそのあたりも気をつけて行きたいと思います。

確かに吉村騎手はよく喋ります。いらんこともよく言います。しかし、それは彼の照れ隠しであり、不安を悟られまいとする防御本能がそうさせているのかも知れません。話をしていくうち、そんな気がしてきました。

竹:レースの話に戻るけど、なぜ自分のスタイルを変えていこうと思ったの?

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吉:もっと上を目指したいと思うようになったんです。騎手になった以上、トップを獲りたいと思わなかったらウソですし、一番眺めの良い景色を見てみたいんです。

そのきっかけともなったレースが、重賞レースの『園田チャレンジカップ』(8月31日)でした。9番人気と低評価だった自厩舎のコスモピクシーに騎乗して、鮮やかな差し切りで快勝するのです。

吉:実を言うと、あのときのコスモピクシーは調子が良くはなかったんです。夏負けの尾を引く状態で、はっきり言って自信なんてありませんでした。でも、結果的にはそれが良かったんです。調子があまりよくないからこそ、無理に馬を動かそうとせず、レースの流れに乗って行くことができたんだと思います。

竹:おぼろげにある自分の理想のレース運びと、うまい具合に合致したんやね。

吉:そうなんです、だからこれからはそれを意識してできるようになりたいんです。それでも、また不安になって、外からビュンって行ってしまうかも知れませんけどね(笑)。

吉村騎手の馬を動かす技術は、兵庫のトップジャッキーですら認めるところ。なのに、いまの地位から抜け出せないでいるのは、自身が神経質と言うように、精神面の弱さなのかも知れません。しかし、いまそのコンプレックスを克服しようとしているのです。

吉:トップを獲るには、トップを獲りたいという気持ちがないと絶対に獲れないと思うんです。もう無理やと思った瞬間に、そこから離れていくんやと思うんです。

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10年という節目を迎えて、湧き起こってきた勝利への飽くなき欲望。あえて自分の弱い面をさらけ出し、熱く語ってくれた彼に、希望の光を見出すことができます。必ずや兵庫を引っ張っていく存在となることを確信させてくれました。なぜなら、コンプレックスは他人に披露した瞬間、もうコンプレックスではなくなるのですから。

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※インタビュー / 竹之上次男

写真:齊藤寿一

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