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五十嵐 冬樹 騎手(北海道)

2016年10月27日

10月12日(水)門別第10レースで、地方・中央通算2,000勝を達成した五十嵐冬樹騎手。昨年は6季ぶりのリーディング奪回を果たすなど、今なお、ホッカイドウ競馬のトップランナーとしての存在感を保つ五十嵐騎手ですが、2014年には調教中に右アキレス腱断裂の大ケガを負いました。「騎手人生で一番大きなケガだった」と本人が語るケガからの復活、そして「ベテラン」と呼ばれる立場となった現在のことを尋ねました。

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通算2,000勝達成おめでとうございます。2,000という数字の重みについて、ご自身ではどのようにお考えですか?

ホッカイドウ競馬生え抜きのジョッキーで、まだ2,000勝を達成された方がいないなか、関係者の皆さんに乗せていただいたおかげでこのような数字を達成することができて、本当に光栄です。

2,000勝を達成されたときには、娘さんも同じ勝負服姿で記念撮影に収まっていましたね。

小3になる下の娘がポニー乗馬を始めて、この前の浦河の競馬祭で初めてレースに出たんですけど、それで作ったんですよ。普段は学校が終わった後に練習しているんですが、いまは馬に乗るのが大好きでしょうがないという感じですね(笑)。

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2,000勝のなかでも、特に印象に残る勝ち星は何ですか?

レーシングクィーン(1996年・黄菊賞)での初重賞もそうですし......もちろん、コスモバルクでもいい経験をさせてもらいましたし、あとは交流重賞なんかでも、イングランディーレでブリーダーズゴールドカップを勝たせてもらったり、プリンシパルリバーの全日本2歳優駿だったりとか。2,000勝となると、ひとつひとつが思い出深いです。

園田競馬場で行われているゴールデンジョッキーカップの出場権も獲得しました。

今まで権利がなかったので、達成してすぐに出られるのかどうか分かりませんけど、やはりそういうレースに出られるのはありがたいことですね。

2014年には右アキレス腱断裂という大ケガも経験されましたが。

ここ何年か痛み止めの注射を打ちながら左膝の痛みを抑えていたんですが、そのせいで自分の歯車が狂っていた部分があって。それが、アキレス腱を切ったおかげでというのも変な話かもしれませんが、その膝を直す時間も一緒に与えられたので、万全の状態でレースや攻め馬に臨めるようになったんですよね。

ケガをされるまでは重賞制覇があり、勝率や連対率も前年以上の成績を残されていましたが、「せっかくいい流れだったのに馬に乗れなくてどうしよう」という焦りはありませんでしたか?

たしかに「せっかく調子よかったのになあ」というのはゼロではありませんでしたが、絶望感には襲われなかったですね。これが初めてリーディングを取れるチャンスだったら違ったかもしれませんけれど。それよりも、アキレス腱を切って、入院しながら膝を診てもらったときに、左膝の手術を決断したときのほうが不安は大きかったですね。

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生まれつき左膝の皿が割れていたということですが、あえて腱を切りっぱなしにする手術も行ったそうですね。

そうですね。そこが引っ張られて痛みが出ていたので。馬に乗らないのであれば手術しなくてもよかったんですけど、やっぱりこれからも乗り役を続けていくつもりだったんで、手術した方がいいなって。ただお医者さんとしても、若いスポーツ選手ならまだしも、この年になって膝を酷使するような職業があまり前例がないみたいで、普通に馬に乗る分には回復できても、果たしてレースに乗るまで筋力が戻るかどうかという不安はありましたよね。

アキレス腱断裂を機に、元々抱えていた膝まで手術に踏み切ったのは、ある意味では「ケガの功名」というか......。

本当にそうですね。膝だけで手術に踏ん切りがついていたかどうかは分からないです。ケガするまでは注射を打ちながらあと2〜3年くらい頑張って、それこそ2,000勝したら調教師に......くらいに思っていたんで。

手術が終わって、リハビリ中はどのようなことを考えていましたか?

手術してから1週間は完全に固定していて、それから軽く歩き始めたんですが、術後の経過が思った以上によかったので、体に関しては特に心配はなかったですね。その年に騎乗していた馬のことも気になっていたので、門別のレースに関しては全部チェックしていました。あと、レースに乗っていなかった時期に、騎手としてだけでなく人としてどうあるべきかとか、「若い頃からもっとこうしておけばよかったかなあ」ということも思い出して考えたりしていました。それが後々、気持ちの面で余裕ができたことにつながってきたのかもしれません。

体も思うように動くようになって、精神面でも余裕ができるようになったということで、ケガでレースを休んでいた期間というのは、その後の騎手人生にとってはプラスになったということですか?

いま思えばプラスだったと思いますね。いい意味での時間が与えられたというか。膝のストレスがなくなったというのはやはり大きいです。

2015年のシーズン初めに復帰し、その年は106勝を挙げて6年ぶりのリーディングの座に立ちました。何か意識の面で変わったことはありましたか?

特に新しく意識したことはありませんが、年をとると馬に乗るときの姿勢が崩れたりとかはしていたので、例えば技術の低下をなるべく少なくするとか、常にそういったモチベーションを保つことは今でも考えています。

「レース後のケアもしっかりしていきたい」ということも以前お話しされていましたが。

今よりはたくさん乗せてもらっていて、毎週のようにJRAにも遠征させてもらっていた頃は、週1回マッサージへ行っていたんですよね。それがレースや調教の後に「まあストレッチでもしてみるか」と思ってストレッチを入念に行うようになってからは、疲れが軽減するというか、マッサージもあまり行かなくて済むようになって、終わった後のケアが重要だと思うようになりました。

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今年のリーディング争いは例年以上に激しいですね。

お客さんにとってはすごく面白いんだろうなというふうには思います。若手が育っている部分もありますし、また育ってこなければ困るし。そうやって世代交代の時期に来ていることを感じながらも、まだやれている部分はあるので、どうにかして頑張っていかなければと思います。食らいついていくのも簡単ではないけれど(笑)。

そんななかでも、連対率は現在ナンバーワンに立っていますね(10月20日現在)。

やはり可能性がある限りは、ひとつでも上へ着順を持っていきたいということは常に考えていますよね。去年は複勝率5割を達成できたのが自分のなかでも大きくて、そこを維持するくらいの気持ちで。ひとつひとつを大事にして上を狙う気持ちが、最後の結果に出ますからね。

今年騎乗されてきた馬のなかで、「この先楽しみだな」と感じる馬はいますか?

ストーンリバーとリコーソッピースですね。どちらもまだ課題は残っていますが、いいものを持っていると思います。ストーンリバーがブリーダーズゴールドジュニアカップを勝ったとき、僕は(同じ厩舎で3着の)ミルグラシアスに乗っていましたが、立ち回りもよく1600向きなので、一発あるんじゃないかと警戒していましたね。

そろそろ重賞勝ちを見たいというファンの皆さんの声もあると思いますが。

馬の巡り合わせや相手関係もあることなので、簡単なことではありませんが、少しでもいい馬を作って、なんとか久々に勝っていきたいなという気持ちはありますね。

(注:10月16日のインタビューの3日後、フライングショットでサッポロクラシックカップを制覇)

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サッポロクラシックカップで2年5カ月ぶりの重賞制覇

今シーズンも残り少なくなりました。ぜひホッカイドウ競馬のアピールをお願いします。

拮抗しているリーディング争いも楽しみにしながら、最後までホッカイドウ競馬を応援していただきたいと思います。自分も何とか2年連続のトップに向けて頑張りたいですね。

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※インタビュー・写真 / 山下広貴

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