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阿部 武臣 騎手(ばんえい)

2017年07月21日

7月1日第9レースで通算1000勝を達成した、ばんえい競馬の阿部武臣(たけとみ)騎手(44)。1998年にデビューして20年、今までの思い出や苦労を伺いました。

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達成おめでとうございます。1000勝はいつから意識していましたか。

残り10くらいからかな。小5と中1の息子が「今日1着獲った?」って言ってきたから、気にしていたのかな。下の子なんて3年くらい前、2着が続いたら「お父さんアヒル飼ってるの?」って。2がアヒルってことだよね(笑)。

デビューして20年、(1000勝まで)時間がかかったなー。1000勝するとは思っていなかった。10年目までは、騎乗依頼が少ない辛い時代だった。当時は賞金が高いし乗るのもランキング上位の騎手ばかり。騎手の数も今の倍で40人くらいはいたからね。1開催で6〜8頭乗ったら多い方。今の若い人より揉まれている。俺らの世代は騎手が多かったけどみんなやめた。俺もやめようと思ったことはある。

それでも踏みとどまった理由はなんでしょうか。

ここの世界しか知らないから、やるしかないのかな、と。少しずつ乗り馬増えてきた時だったし、レースで1着獲ったりすると、やっぱり...ね。負け込むと嫌になるけど、自分が調教をした馬が頭(1着)獲るとうれしいし、次の糧になる。

義理の父である、坂本東一さん(現調教師)には怒られて、怒られて...(笑)。坂本さんは早い時間から調教する人だったから、自分も午前2時とか3時から調教していたよ。それでも11年前は、手当も下がってきたのに我慢していたら『廃止になるかも』だもんね。やめておいた方がよかったのかな、って思ったよ。今はだいぶ売り上げが上がって手当も上がってきたけど、なんだかんだいって馬が好きなんですよね。

一から馴らして、能検やって育てて、オープン馬、というのを育てたいな。馬は子どもと同じで勝手に育っていかないから、一つ一つ教えて作っていく。

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7月9日に行われた1000勝達成セレモニー(写真:ばんえい十勝)

レースや調教で心がけていることは。

馬は『前に行きたい気持ち』があってそれで競走している。障害でいかに嫌な思いをさせないで上らせるか。その馬の気持ちと能力を把握して、流れをみながら嫌な思いをさせないようにする。

調教は、馬に適した方法や、力も一頭一頭違うので考えながら行う。

馬との出会いについて教えてください。

宮城県大崎市(旧古川市)で、祖父が山から馬を使って材木出しをしていました。俺らは「馬車追い」って言ってた。

馬でやると山が痛まないんだ。トラクターは、通るために道を作らないといけないから。馬はその必要がない。

俺も中学、高校の時は手伝っていたよ。草ばん馬にも乗っていたから、本場の乗り方や馬の手入れなどを覚えるのに行ってみよう、と高校卒業後にばんえいに来ました。

思い出に残る馬や、今注目している馬を教えてください。

ホッカイヒカルは特殊な馬だったよね。ゲートは出ないしスタートも走らない。手間がかかった。その分思い出深い。来年産駒がデビューするから、うちの厩舎に来たら乗りたいな。シベチャタイガーやイケダガッツのような、ひとくせある馬に乗ることが多いかもね。その時、焦らないことを覚えたかもしれない。

1000勝を達成したミノルシャープはこれから良くなるね。今は休み休み使っているけど、秋になってスピードを生かす競馬ができれば。昔は細かったけれど体が出来てきたし、将来的にオープンになれる馬。障害を降りたら速いし、障害が良く瞬発力がある。

キサラキクは、男馬の中に入るとちょっと辛いけど、軽いといいレースをする。この馬なりに頑張っている。春はあまり調子がよくない方だけど、今年は動きがいいよね。

バウンティハンターは昔は腰が悪く、(障害で)寝てばっかりだったが、それが解消されてきた。

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2016年ドリームエイジカップをキサラキクで制した

今のばんえいについて思うことはありますか。

売り上げは伸びているけど、大事なのは人材育成だよね。馬の触り方を覚えないと。騎手になっても、馬の調子を見極められないといけない。それには5、6年はかかるかな。

若い人が少ないよね。生き物相手だから休みがない。馬優先だからね。それを理解して、我慢ができないとだめ。馬主さんの財産を預かっているわけだから。

若い騎手は、昔よりは騎乗できるようになっているけど、自分でレースを考えられるかが重要。

今後の目標を教えてください。

一つ一つ大事に乗って、その馬にとって一番いいレースができるよう心がけたい。それが自然と勝ち星につながっていく。

イレネー記念もばんえいダービーも(ともに2014年ホクショウマサル)獲ったし、今後一番勝ちたいのはばんえい記念だね。あそこまでたどりつく馬がなかなかいない。駆け引きが重要で、乗ってておもしろいから毎年乗りたいレース。

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※インタビュー・写真 / 小久保友香

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