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板垣 吉則 騎手(岩手)

2006年10月20日

   

板垣騎手は岩手生え抜きの騎手ではない。デビューは、今はなき上山競馬場だった。
廃止された翌年から岩手に移って騎乗を続け、今年は岩手リーディング5位(8月25日現在)
につけている。
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まずはデビューの地、上山から岩手に移るときの経緯について聞いた。


■まさかなくなるとは思っていなかったですからね。ぼくは山形市で生まれ育って、父親に
上山競馬場に連れて行ってもらって、それで中学の時には騎手になるって決めていたわけ
ですからね。

なんだか寂しいような複雑な思いでした。最終日はジョッキーが本馬場に並んでいろいろ
観客席に投げ入れていましたが、ぼくもいろんなものを投げました。

たしか勝負服は3枚投げたかな。

上山最終日の時点では、この先どうなるのかまだ決まっていなかったので、不安もかなり
ありました。その後、岩手から騎手を受け入れてくれるという話が正式にあったので、手を
挙げたんです。だから岩手の競馬には、感謝の気持ちがありますね。

そのときに心機一転ということで、勝負服を変えることにしたんです。デビューのときも自分で
決めたんですが、若い頃の感性だったからか、ちょっとややこしいデザインで(胴白・緑ダイヤモンド、
そで桃・緑二本輪)。だから今度はシンプルにしました。

ええ、簡単に決められましたよ。基本的には岩手の騎手があまり使っていない色を中心にしようと
思って考えました。あとで迷いが出ないようにと、決めたらすぐに勝負服屋さんに発注して(笑)。

今年は3歳牝馬サイレントエクセルとのコンビで快進撃。8月20日のひまわり賞も単勝1.0倍の
支持に応えて圧勝した。


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■ひなげし賞(7月22日・盛岡)のレースはすごかったですね。直線でビジョンを横目で見て、
差がついているなとは思っていたのですが、ゴール後に改めてビックリ。2秒3差ですからね。

もう岩手の牝馬で相手になる馬はいないでしょう。サイレントエクセルのいいところは精神力の強さ。
門別に遠征(エーデルワイス賞)したときも、長距離輸送があったのにマイナス1キロでしたからね。
すごい馬だなと感動しました。3歳になってそれがいっそう強くなっている感じがします。

でも、たとえばダートグレードではどうなのかなあ。他の地区とはレベル差がありますからね。
なんでそう思うのかというと、岩手の競馬って、盛岡は特にそうなんですが、スタートしてからの
ペースが遅いんです。おそらく速いペースで行くと最後までもつか不安な騎手が多いんでしょう。
だからここでどんなに強くても、全国レベルだと疑問がちょっとあるんです。


板垣騎手は、04年のマイルチャンピオンシップ南部杯でJRAのビッグウルフの騎乗依頼を受け、
3着に導いている。


■もともとは地元の馬に乗る予定だったのですが、故障して出られなくなって。でもぼくはそれを
知らされていなかったので、騎乗依頼の電話がかかってきたときに断ったんです。そうしたら
「いや、君の馬は出ないことになったって聞いたよ」と。確認してから連絡をくれていたようです。

しかし馬はよかったですねえ。本当に。小柄だったけど、ものすごく背中がやわらかくて。
キャンターに下ろした瞬間に「これは違うな」ってわかりました。バネがすごくあって、これが
一線級の馬の背中なのかという感触が心と体に残っていますよ。

硬いところがあるサイレントエクセルとは大違いです(笑)。


昨年は、区切りの1000勝を達成した。


■上山では900勝台で競馬が終わってしまいましたから、1000勝はムリな数字だと思っていた
時期もありました。それだけに達成したときは素直にうれしかったですね。

でも、ぼくは目標を立てるというタイプではないんですよ。ゲンもかつがないし。だからこれからの
目標はコレといってないんです。

目の前のレースを一所懸命に乗るというだけかな、考えているのは。


板垣騎手は水沢競馬場の所属。ということで、盛岡での開催日は忙しい。


■騎手も当日輸送なんですよ。水沢所属の騎手は、水沢競馬場を7時半頃に出るバスに乗って
盛岡競馬場に通っているんです。盛岡の第1レースに騎乗があると、本当に着いてすぐという
感じになりますね。

そういうわけだから、朝は3時頃から攻め馬をしないと間に合いません。
若い騎手は2時には始めてますから、ぼくはまだマシですが。帰りは5時半頃に出るバスに乗って、
7時頃に水沢に戻ります。本当に盛岡開催のときは時間がないですね。


岩手県競馬には2つの競馬場がある。その違いについて、騎手からの目線で教えてもらった。


■水沢と盛岡の乗り方は明らかに違います。ぼくは水沢だと右のあぶみを長くして体が内に傾くよう
にしていますが、その長さのバランスが水沢と盛岡では違うんです。もちろん仕掛けどころも違います
から、レースの中身はまるで違いますね。あと、芝のときも乗り方が変わります。

いちばん大きく違うのは、あぶみの長さ。ダートのときより短くして、馬に負担がかからないようにして
いるんです。ちなみにぼく自身は、体調やリズムの良し悪しによっても微妙にバランスを変えています。

枠順でいうと、水沢の1600と1800メートルは外枠の先行馬は不利ですね。だからといって内枠が絶対
有利かというとそうでもないんですが......。

ほかは盛岡も含めてそんなに差はないと思います。ただし、芝は内枠が絶対に有利。1コーナーでいい
ポジションがとれるかどうかで大きく結果が分かれますから。

それから岩手の馬は得意コースがハッキリある馬が多いですけど、実は騎手にも得意不得意がある
みたいですよ。


という答えを受けて、板垣騎手はどちらが得意ですかと聞いてみたところ「それは教えられないなあ」と、かわされてしまった。とても気さくな板垣騎手なのだが、そこは言えないのが勝負の世界なのだろう。これから先サイレントエクセルとのコンビで、牝馬ダートグレードレースを面白くしてくれることを期待したい。

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板垣吉則(いたがきよしのり)

1972年9月3日生 おとめ座 B型
山形県出身 千葉博厩舎
初騎乗/1990年10月21日
地方通算成績/7,519戦1,089勝
重賞勝ち鞍/
ひまわり賞、青藍賞、オパールカップ、全日
本2歳アラブ優駿(福山)、蔵王賞3回(上山)、
奥の細道大賞典3回(上山)など26勝
服色/胴黒、そで桃
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※成績は2006年8月25日現在

(オッズパーククラブ Vol.3 (2006年10月〜12月)より転載)

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