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吉留 孝司 騎手(荒尾)

2006年07月20日

   日本最南端の競馬場である荒尾競馬。かつては土日開催だったが、今では〔九州競馬〕の
ひとつとして、平日の開催が主になっている。厳しい時代ではあるが、仕事人は日々、頑張って
いるのだ。数々の名手がいぶし銀の技をみせている荒尾競馬で、過去にリーディングジョッキー
の経験があるのが吉留孝司騎手。

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今年はトップの吉井浩和騎手にやや水をあけられているものの、2位につけてる。通算成績も、
インタビューの時点(5月13日)では995勝と、大台間近となっている。

■1000勝はとりあえずの目標ですね。これまで大きなケガがなかったのも、ここまでこられた
理由だと思います。これからもしっかり乗りたいし、他の競馬場でも乗ってみたいですね。

吉留騎手は、今年2月のJRA小倉競馬で、13番人気の馬で中央初勝利を挙げた。

■そうなんです。中央の競馬場で初めてJRA所属の馬(ウルヴズグレン)に乗って勝ったんです。
芝の経験は盛岡競馬場ではありましたが、中央ではその日が初めてでしたからね。

実をいうと、前の日からドキドキしっぱなし(笑)。どこになにがあるのかもわからないし......。
それでも、そのひとつ前のレース(萌黄賞・芝1200メートル)に荒尾の馬で出ていたので、
それで気持ちが落ち着いたということはありました。

ウルヴズグレンは、かかりぎみに行く馬だと聞いていました。なので、うまく折り合いを
つけられればと思っていたのですが、うまく中団につけられました。

そして徐々に進出していったらゴール前では3頭並んでの大接戦でしたからね。
もう本当に、死ぬ気で追いましたよ(笑)。

これからもJRAなどの大きな舞台でもっともっと乗ってみたいですね。

中央に乗りにくるためには、少しでも多くの認定レース勝ち馬をお手馬にしなければならない。

■そうなんですよ。認定レースのときは、普通のレースとは違ったピリピリしたムードが漂います。
どの騎手も狙っているからだと思うのですが、それに負けないように調教から気を引き締めて乗らないと。

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鹿児島県出身の吉留騎手。騎手になるきっかけを聞いた。

■鹿児島といっても県内ではいちばん北の出水市なんです。中学3年の1学期に、近所のおじさんに
騎手という職業があるよと教えてもらって、その人に連れてこられたのが荒尾競馬場だったんです。

中学3年ですから、将来何になりたいかなんてまるでなくて。そこで、テレビでも見たことがなかった
競馬というものをナマで初めて見て、これはすごいなと。

運動神経はよかったほうだし、やってみようとすぐに思うようになりました。

卒業後に地方競馬教養センターに入って、そこでの同期が吉田稔騎手や宇都騎手(以上名古屋)、
佐藤祐樹騎手(船橋)たちなんです。ウルヴズグレンの話が回ってきたのも、管理している
小檜山調教師が交流競走で佐藤騎手をよく乗せているらしくて、その縁でぼくの名前を知っていた
からだそうなんです。そんなわけで、小檜山調教師には1度しか会っていないんですよ(苦笑)。

荒尾といえば海沿いの競馬場。馬の背中から感じる特徴を聞いた。

■海風が強い日はけっこう危なくて、馬ごと風にあおられることがあるんですよ。
そんなときは体を馬にぴったりとくっつけて乗らないとシャレになりません。馬もビビりますし、
全体のペースも遅くなりますね。砂も風に乗って体に当たるから痛くて。

ここの砂は壱岐の海砂を水洗いしたものなので、粒が大きいんですよ。
そういうときは、いくら風の抵抗を受けようとも前で競馬したい気分になりますね。

荒尾競馬場は1〜2コーナーに比べると3〜4コーナーが大きいし、直線も長めなので、
追い込みがわりと効くんです。

ただ、雨が降ると先行馬が有利になりますね。枠順の有利不利はあまりないように感じますが、
1コーナーではいい位置を回るようにと思って乗っています。

でも、勝負どころで手ごたえがあるのに伸びない馬もいるんです。
走りやすくて故障する馬も少ないのですが、パワーが必要な馬場なんですね。

行きすぎや早仕掛けではパタッと止まりますし。なので、馬場入場後に軽く走らせて、その馬の力とか
体調などを把握するようにしています。

その上で、その馬なりの勝負どころを考えて、レースに臨んでいるんです。

歴史ある荒尾競馬場も、売上げが徐々に下がってきた。そのしわよせはこんなところにも現れている。

■連続で競馬が開催されるときも、最終レース後すぐに調整ルームに入らないで、一度厩舎に
帰るんです。というのは、乗っているだけでは生活が厳しいですから。

今、ぼくはカツイチカツヒメ(牝3歳)という馬の世話もしているんです。そのために、一旦厩舎に戻って
飼い葉つけや寝わらの整備などをして、夜7時までに調整ルームに入るんです。

賞金が下がっている状況だから、乗せるほうもシビアですよ。

荒尾はけっこう乗り替わりが多いのもそういう理由からだと思います。そんなこともあるので、
ぼくは所属以外の厩舎も回って手伝いを積極的にするようにしています。

荒尾はクセ馬や脚元に不安がある馬が多いので、予備知識を頭に入れるためにも。

また、それぞれの馬のレースVTRをしっかりと見て、各馬の特徴を自分なりにつかむようにしています。

いつその馬の手綱を任されてもいいように準備だけはしっかりとね(笑)。

今回のインタビューは、レース開始前にさせていただいた。その2時間後、パドックの外側から
馬にまたがる吉留騎手を見た。ビックリした。さっき面とむかって話をしたばかりだというのに、
その姿はしばらくのあいだ同一人物だとわからないくらいに、キリリと引き締まっていたのだ。

いやいや恐れ入った。吉留孝司騎手、なかなかの勝負師である。

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吉留孝司(よしどめこうし)

1969年2月6日生 みずがめ座 B型
鹿児島県出身 頼本盛行厩舎
初騎乗/1986年10月27日
地方通算成績/10,231戦999勝
重賞勝ち鞍/花吹雪賞(佐賀)、大阿蘇大賞典、
アラブ大賞典、肥後さざんか賞
2回、ヤングチャンピオン、荒
尾銀盃、九州アラブ栄冠など
服色/胴紫・桃ひし山形一本輪、そで白・桃二本輪
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※成績は2006年5月25日現在

(オッズパーククラブ Vol.2 (2006年7月〜9月)より転載)

 

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