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山口 竜一 騎手 (北海道)

2009年07月19日

  長い間在籍していた宇都宮競馬からホッカイドウ競馬に移り、第一線で活躍を続けている山口竜一騎手。30年近くに及ぶ騎手生活、そしてこの先の夢についても聞かせていただいた。

 

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 山口騎手が競馬の世界に入ったきっかけは、叔父のひとことだった。

 

■馬主をしていた叔父に、体が小さいし騎手にならないかと言われたんです。それで中2の夏休みに宇都宮の調教師を紹介されて、厩舎体験をしました。最初は2?3日の予定だったのですが、そのままずるずると......。でも、そのときは騎手という仕事をあまり理解していませんでした。それでも最初に馬に乗ったとき、面白いなと思いましたね。馬乗りは順調に上達して、半月くらいで攻め馬に乗れるようになりました。

 

 

 その後は順調に地方競馬教養センターを卒業。1981(昭和56)年4月25日にデビューを果たした。

 

■最初のレースは、わりと冷静に乗れたと思います(3着)。自分の頭のなかでペース判断もできたかなと。それから勝ち星が増えてきて、周りのマークがきつくなると勝てなくなって。どうにかしようと競馬に集中すると、逆に悪循環に......。そんなときに助けてくれたのが厩舎のみなさん。負けたときでも師匠は「乗り役が走っているわけじゃない」と言って、敗因を騎手に求めなかったんです。そういうふうに言われると、もっと頑張ろうという気になりますよね。スタッフも馬をしっかり仕上げてくれましたし、感謝しています。

 

 

 

 

 その後も着々と勝利を重ねたが、05年3月14日限りで宇都宮競馬は廃止となってしまった。

 

■ラストの日の翌日以降は、スケジュールが真っ白(笑)。実は1?2年くらい休もうと思っていたんですよ。でも、いざ何もしないでブラブラしていると、体がうずくんです。気を紛らわせようと飲みにいっても"大変でしたね"などと心配されて気が滅入るし。かといって家にずっといれば、なんだか気まずくて。休みはじめて1カ月くらいで、もうダメだと思いましたね。

 

 そうした心境の変化が、騎手という道を再び思い起こさせた。

 

 

■廃止の前後には"こっちに移籍しないか"という誘いもありましたが、どうもピンとこなくて断っていました。そのあと、そういう風に気持ちが変わってきたとき、全然知らない土地である北海道に行こうと思いついたんです。北海道にはいい馬が集まりますし、JRAに遠征する機会も多いですから。それで、宇都宮に遠征に来たときに電話番号を聞いていたホッカイドウ競馬の齊藤正弘騎手に相談したら、"だいじょうぶだいじょうぶ。調教師も紹介するよ"と、あっさり。

 

 

 

 そういう経緯で北海道への移住が決定。以来、単身での生活が始まった。

 

 

■それまで家事をしたことがなかったから、最初は手際が悪くって。でも今は料理の腕も上がりましたよ。よく作るのは親子丼とかカツ丼とか。カツは買うんですけど(笑)。
ナイターだと夜10時頃まで仕事で、翌日は午前2時半起き。体が覚醒していますから、すぐに眠ることもできなくて、晩酌をついついしてしまいます。そんな生活ですが、体には気をつけていますよ。疲れて食欲がないときでも、食事はきちんと摂るようにして。それから気分転換。北海道に来て、しばらく休んでいたゴルフを再開しました。コースに出て思いっきり打ってきますよ。

 

 

 

 そうした北海道での奮闘のなかで、活躍馬、ジンクライシスとの出会いがあった。

 

 

■初めて乗ったとき、一瞬で鳥肌が立ちました。何十年も馬に乗っている人間がですよ。それくらいびっくりしちゃって。走らせてみると、横ブレもないし、スピードの乗りも違うし。そんな馬に乗れたことがうれしくてねえ。これでいつ引退してもいいや、そう思えるくらいの感動がありました。

 

 

 

 ジンクライシスとのコンビで、JRAのエルムステークスでは2着に入った。

 

■JRAの舞台はワクワクしました。普段の札幌競馬場とは景色も違って見えて。レースではペースを守ってロスなく走らせることに専念しました。レベルの高いレースを肌で感じることができたのは財産ですね。

 

 

 その後、06年には、インパーフェクトでJRA初勝利を飾り、ディラクエでは07年の北海道2歳優駿を制した。

 

■インパーフェクトは乗り味がなめらかで、芝適性とはこういうものかと教えてもらいました。ディラクエは入厩当初、全然仕上がっていなかったのが、能力検査を受けて走り方が一変。こんな馬はそういないと思えるくらいの変わりようでした。毎年、ゲート練習などで100頭くらいの2歳馬に乗っていると思うんですが、正直言って、シーズンの開始前にはどれがトップになるかなんてわからないものですよ。だからこそ、面白いんですけどね。

 

 

 そうした優駿の卵たちとの出会い。宇都宮競馬の廃止時に消えかけた闘志はよみがえり、さらに前へと進んでいく。

 

■今度のオフシーズンは、シンガポールの短期免許に申し込もうと思っています。たとえ騎乗数が少なくても、そこで少しでも吸収できれば、と思って。今はなんだか、欲が欲を生んでいるような感じですね。

 

 周りのみなさんは2千勝もしてすごいとか言ってくださいますが、自分としては騎手として成功したとは思っていません。満足感は数字では得られないもの。たとえ負けても、納得できるレースができたかどうかですから。これからも"最高の騎乗だった"と思えるレースを増やしていきたいと思っています。パーフェクトな騎乗をしたレースは、ビデオをみて自画自賛しますよ。『すげえな、この騎手』って(笑)。

 

 

 「でも、勝つということは何千回やってもうれしいものですよ」とも。その心は向上心への原動力でもある。まだまだやめられないですね、と問いかけると、ニヤリと笑みを返してくれた。山口騎手はグランシャリオのアーティスト。円熟の魂がこもった騎乗に注目をしていきたい。

 

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山口竜一(ホッカイドウ)
やまぐちりゅういち
1964年1月26日生 みずがめ座 A型
栃木県出身 桧森邦夫厩舎
初騎乗/1981年4月25日
地方通算成績/17,893戦2,649勝
重賞勝ち鞍/エーデルワイス賞JpnIII2回、北海道2歳優駿JpnIII、北斗盃2回、王冠賞、南部駒賞、とちぎ大賞典2回、北関東ダービー2回、とちぎダービー2回など48勝
服色/緑、黄山形一本輪
※成績は2009年5月25日現在

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(オッズパーククラブ Vol.14 (2009年7月〜10月)より転載)

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