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宇都 英樹 騎手(名古屋)

2012年04月16日

今年でデビュー27 年目を迎える宇都英樹騎手は、愛知県騎手会の会長。勝利を目指す仕事のほかに、競馬の活性化や情報発信などにも心を砕いている。これまでを振り返りつつ、名古屋競馬と自身のこれからについても話を伺った。
 

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宇都英樹騎手が騎手デビューした当時の名古屋競馬は、騎手同士の戦いも激しかった。

入ったときは騎手が55 人くらいいて、いちばん多かったときが58 人かな。調整ルームに入りきれないくらいでしたよ。だから乗り鞍の確保が大変。同じ年代に安部幸夫騎手、吉田稔騎手などがいるんですが、みんな5 日間の開催で2 ケタ乗れない程度の騎乗数でした。調教でも乗る馬があまり回ってこないという時期が5年くらい続きましたね。でも、それが当たり前だと思っていた部分があったかもしれません。

それでもなんとか上を目指したい。その想いは巡りあわせの幸運もあって、少しずつ花開いていく。

僕は鹿児島県出身なんですが、名古屋競馬にはなぜか同郷の人が多くてね。僕の父がウチの厩舎の厩務員さんと知り合いで、竹口勝利調教師が騎手を探しているから、と聞いてきたことがこの世界に入るきっかけです。でも入ったら兄弟子がいて(笑)。最初はいろいろと厳しかったですが、そのあと宮下兄妹(康一、瞳の両騎手)が来てくれたことで、他の厩舎に顔を出せる余裕ができました。

その頃ですね、マルブツセカイオーに乗れることになったのは。主戦の戸部尚実騎手が体を悪くして、代役が回ってきたんです。あの馬で東海桜花賞を勝たせてもらいましたが、運もよかったですよ。その年から東海桜花賞が名古屋開催に変わったんです(前年は中京競馬場の芝2000m)。左回りと芝が苦手だったマルブツセカイオーにとっては、本当に大歓迎。自分も『どうせ1 回きりだろうし』と思って開き直って騎乗しました。ヘタを打ったらどうしようかと考えたってキリがないですから。

その結果、東海所属馬による大レースを勝利。しかしながらその頃は、笠松競馬所属馬が名古屋の重賞戦線で大攻勢をかけている時期でもあった。

あまりに笠松の馬に勝たれるので、荒川友司調教師(故人)にグチっぽく文句を言ったら『ウチらが来られなくなるような馬を作ってみろ』と返されまして。そんなこともあって、少しずつ意識が変わってきたように思いますね。坂路もできましたし。

そういった対抗意識が、2000 年以降に全国区の活躍馬を送り出した要因になったのかもしれない。

でも今はそういう馬が少なくなりましたね。昔はどのクラスでも力関係の判断が難しいレースが多かったですよ。でも今はだいたい堅いでしょ。もっと面白みのある番組を作ってくれと、主催者にはよく掛け合っていますよ。その上で、話題性のある馬が出てきてくれれば。最近で僕が乗った馬でいうと、マリンレオとかね。

アラブながら、サラブレッドの重賞を制したマリンレオ。その馬で宇都騎手は福山のアラブ大賞典と金沢のアラブグランプリを勝利した。そのときは『本当は吉田稔騎手が乗る予定だったんですが、都合が悪かったらしくて、僕に依頼が回ってきた』という経緯だったそう。やはりこの世界で成功するためには、実力以上に縁が重要なのだと感じずにはいられない。それらを武器に実績を重ねてきた宇都騎手は、3年前から騎手会長を務めている。

任期は2年なんですが、昨年また再選されまして。そのなかで、昨年から騎手ズボンに広告を付けるということを始めました。いろんな企業やお店に営業に行きましたよ。なかなかうまく進んではいませんが、でもこうやって動いていくことで、「競馬場の人はがんばっているんだな」と、わかってもらえればと思いますからね。大震災のときは騎手会で募金活動もやりましたし、競馬場のお祭りにも協力しました。騎手はレースで一所懸命に乗るのが本分ですが、それ以外にもいろいろやっていかないと。お客さんが競馬をやめてしまったら、もうおしまいですからね。

騎手会長として、そして名古屋競馬を愛する者として、宇都騎手はさまざまなことを考えている。しかし本人もひとりの騎手。向上心は忘れていない。

デビュー当初はリーディング20位以内には入りたいなと思っていて、それが実現したら次はリーディングジョッキーカップに乗りたいなとなって。そうしたら今度はそれを勝ちたいってなるじゃないですか。いい馬に乗せてもらって教えられたことも多いですが、そういった気持ちがあることが、教養センターであんなに下手だった自分がここまでこられた理由かなと思います。

宇都騎手の通算勝利数は1700あまり。2000勝という数字も見えてきた。

去年、レース中に他馬の落馬に巻き込まれる形で、右の鎖骨を骨折してしまったんですよ。それで今は騎乗数を少しセーブしているんですが、2000 勝......、できるかなあ。最近のペースなら4年後くらいですかね。なんとか頑張ります(笑)。

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名古屋競馬の騎手界は、若手の台頭もあって激戦区なのは今も同じ。そのなかで2010 年と2011 年はシルバーウインドとのコンビでグランダム・ジャパン古馬シーズンに参戦した。

あの馬は先頭に立つと気を抜くし、ゲートでも落ち着かないし、乗り難しいタイプ。あと、夏に弱いのがね......。去年の金沢(読売レディス杯)のときなんて、暑いのに全然汗をかかなくて、ゲート裏でダメだと思いましたもの。そんな状態でも3着に来るのだからすごいですよね。今年は3歳のマザーフェアリーが楽しみな存在。グランダムも狙えたらと思っているんです。

宇都騎手は「名古屋競馬場を夢のある場所にしたい」と口にしていた。それにつながっていくように、騎手会長は自分から動く。このインタビューのあとも、広告ズボンの広告主のところにあいさつと営業に行く予定になっているとのことだった。

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宇都英樹(名古屋)
1968年8月14日生まれ しし座 A型
鹿児島県出身 竹口勝利厩舎
初騎乗/1986年10月16日
地方通算成績/11,761戦1,736勝
重賞勝ち鞍/東海桜花賞2回、アラブ大賞典(福山)、
アラブグランプリ(金沢)、ゴールド争覇2回、
ゴールドウイング賞2回、名港盃2回、くろゆり賞(笠松)、
スプリングカップ、尾 張名古屋杯2回など27勝
服色/胴青・黄一本輪、そで青黄縦じま

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※成績は2012年2月29日現在
(オッズパーククラブ Vol.25 (2012年4月〜6月)より転載)

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