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渡辺 博文 騎手(福山)

2008年04月20日

 上位の騎手が僅差の成績でしのぎを削っている福山競馬。その争いを制し3年連続で
リーディングを獲得しているのが、渡辺博文騎手だ。これまでコンスタントに活躍を続け
られてきたのは「今までほとんどケガをしたことがない」からなのだそう。
そんな渡辺騎手に、福山競馬場の特徴なども交えつつ話を伺った。
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トップジョッキーの地位を確かなものにした渡辺騎手だが、意外なことに、騎手になるまで
に苦労を重ねた晩成のところがあるらしい。

■僕は春木(競馬場は74年に廃止)で生まれて5歳の頃に福山に来たんです。当時の競馬場は
すごい人でしたね。その頃のスタンドは小さかったとはいえ、入りきらないほどでしたから。
そんな時期に兄が騎手になって、その姿を見るうちに僕もなりたいなあと。でも、地方競馬教養
センターの長期騎手課程の試験になかなか受からなかったんです。

仕方がないから厩務員を2年くらいやりました。ようやく19歳のときにデビューできたのですが、
そこからも大変で。所属した厩舎には、兄弟子が4人もいたんです。それもみんな、福山を代表
するような騎手。だから、仕事は攻め馬ばかりでした。その状況をなんとかしなければと思って、
自分の厩舎の仕事が終わってから、他の厩舎を手伝いに行ったんです。

2月頃には、牧場から裸馬の状態で運ばれてきた2歳馬に鞍をつけてハミをつけてという馴致作業も......。
冬になると「ああ、この時期がやってきた」とユウウツになりましたね。そして何度投げられた(落とされた)
ことか。でも、そういうことを続けていくうちに騎乗数が増えてきて、3年目にはベストテンに入れるように
なったんです。

しかし素質がないと、なかなかそううまくはいかないもの。何か成功の秘訣のようなものは
あったのだろうか。

■騎手になる前から、福山のレースはほとんど全部見ていましたね。レースが好きで好きでたまらない
という時期もあったくらいで。いま思うと、それが自然な形でイメージトレーニングにつながっていたよう
に感じます。なぜかわからないのですが、デビューの時から騎乗技術には自信がありました。

なかなか実際にはうまくいかないのですが、なぜか自信だけは(笑)。

その自信を失うことなく今日まで来た渡辺騎手。福山競馬場で結果を残すポイントは何なの
だろうか。

■福山の場合は、道中の位置取りが本当に重要。人気になっている馬が内枠に入ると、絶対に出して
もらえないくらいです。コーナーもきつくて、普通に走るだけでも外にふくれるコースですが、かといって
ブレーキをかけるわけにもいきません。特に3〜4コーナーの中間には、馬の体が一旦まっすぐになる
くらいの直線があります。

つまりそれだけカーブがきついんですよ。だから、コーナーの出口をどうこなすかが最大のポイント。
場合によっては、4コーナーで1完歩待って、外にふくれた馬の内を突くこともありますよ。

長方形の土地を一杯に使って作られたコース。ただ、その競馬にも変化が出ているという。

■位置取りを考えつつ、時には強引な競馬ができたのは、馬がアラブだったから。サラブレッドの場合
だと、4コーナーでインを突くより、スピードにまかせて外を回ったほうがいいというケースも増えてきました。

そして、サラは体に注意しないといけないところがありますね。アラブに比べると明らかに繊細ですよ。
特に不良馬場だと馬場がすごく硬くなりますから、脚元が大丈夫か気になります。
 
しかし、その時代の変化に対応していかなければならないのが、今の福山競馬。騎手の
技量にも左右されがちな小回りコースの勝負どころについても教えてもらった。

■福山では1250メートルと1600メートル戦が多いですが、どちらもいちばん気をつかうところは
最初のコーナー。傾向としては、内枠有利で先行するのが基本です。外枠から先行争いに加わると、
気がついたときには最後方になってしまっていることもありますよ。ですからゲートを出てからの
作戦が、結果を大きく左右します。

道中も仕掛けどころのタイミングがかなり重要。福山は騎手同士が意識し合っている感じがすごく
あることも、レース後半が激しくなる要因かもしれません。あとは騎手の性格。早仕掛けしがちな
騎手をマークすると、楽に勝てることも。誰なのかはナイショですけど(笑)。だから、前にいる騎手が
誰なのかを確認して、仕掛けどころの判断をすることもありますよ。

小回りコースでの激しい攻防。それだけに「ずっと外を回らされて負けたときは、こんな情け
ないことはないという気持ちになる」そうだ。

■そんな思いでシュンとなっていると、さらにパドックで追い打ちをかけられるんですよ。絶対に勝つ
だろうと思っていた馬で負けたときは最悪です。広島は言葉もキツイですから、そういうときはパドック
の騎乗周回がとても長く感じられますね。

1人がヤジを始めると、周囲に飛び火する傾向もあるんですよね......
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そんな観客からの愛のムチ(?)を受けつつリーディングの頂点を守る渡辺騎手に、今後の
目標を尋ねた。


■まずは早く2000勝を達成したいですね。そうすれば、園田のゴールデンジョッキーカップなどに
出場できる可能性も出てきますから。そして今後はJRAに乗りに行きたい

。去年のワールドスーパージョッキーズシリーズで赤岡君が勝ったときには感動しましたからねえ。

残念ながら2月24日に予定されていた初のJRA遠征は、騎乗予定馬の辞退によって実現
しなかった。それでも近いうちに、その希望がかなう日がくるはずだ。

「やっぱり騎手はおもしろい。まだまだ頑張っていきますよ。いいことばかりじゃないけれど(笑)」
と、人懐っこい笑顔をみせる渡辺騎手の活躍に、今後も期待ができそうだ。

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渡辺博文(わたなべひろふみ)

1966年7月4日生 蟹座 B型
大阪府出身 柳井宏之厩舎
初騎乗/1986年4月27日
地方通算成績/12,629戦1,915勝
重賞勝ち鞍/福山大賞典3回、全日本アラブ
グランプリ、ローゼンホーマ記念3回、福山
桜花賞3回、全日本2歳アラブ優駿、銀杯3
回、椿賞2回など34勝
服色/胴青・黄二本輪、そで赤・黄二本輪
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※成績は2008年2月17日現在

(オッズパーククラブ Vol.9 (2008年4月〜6月)より転載)

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